新着情報

Miyajima News

2016年3月5日

兄弟経営

【H28年(2016年)3月のコラム(第183号)】





ブルックス・ブラザーズは1818年創業。リンカーンなど歴代のアメリカ合衆国大統領が愛用

していたことで有名なブランドです。創業者ヘンリー・サンズ・ブルックスの長男が事業を継ぎ、

さらにその4人の弟たちが承継した時に「ブルックス・ブラザーズ」と社名変更したそうです。

良質な毛織物を表す「ゴールデン・フリース(リボンで吊り下げられた子羊)」がシンボルです。





1.兄弟経営



「ミヤジマさんはご兄弟で仲良くやられていていいですね」と、よく言われる。



つい先日も、ある先輩社長さんから「会社に息子二人が帰ってきてくれたのはいいが、

二人の関係がどうもうまくいかず悩んでいる。どうすればミヤジマさんのようにうまくいくのか

教えてほしい」という相談があった。



僕は兄弟経営でうまくいっていないのは、大体において兄の方に問題があり、逆にうまく

いっている場合は、弟の方がエライという場合が多いのではないかと思う。

でも実はこの判断はむずかしい。なぜなら、一般的に会社の実権を握っているのは兄の方であり、

よって世間はどうしても兄の方を贔屓目に見るからである。

しかし、結局のところ親子でも兄弟でも、あるいは労使関係や上司と部下の関係でも、

うまくいかないのは「上」に問題があるからだと思う。もしそれでもうまくいっているとすれば、

実は「下」が我慢しているから・・・という場合が多いのである。



ご存知のように、当社では私の十歳年下の弟が「常務」としてがんばってくれている。

帰ってきてくれて今年で13年になるが、とても頼りになる、いい弟だ。

(普段こんなことを口に出して言うことは殆ど無いので、これを読んだら笑うだろうなー)



弟を会社に呼び戻そうかと考えた時、何人かの人に反対された。

やはり兄弟で揉めている会社が多いからである。

私が39歳で父から社長を受け継いだ時、何かの本に「社長の最大の仕事は、事業を発展させる

ことではなく、次の代に無事に事業を引き継ぐことである」と書かれてあった。

まさに「経営は、ゴールのない駅伝である」と言われる所以だろう。

でも自分には三人の娘がいるが、息子はいない。娘たちの将来は自由にさせてやりたい。

ではどうするのか?

そこで考えた結果、十歳下の弟に声をかけたのだが、子どもの頃から「お前は跡取りだ」と言われて

育った長男の僕とちがって、三男の弟は「お前は自由にやれ」と育てられていたので、

まさに「寝耳に水」だったろうと思う。それでも宮嶋家の息子としての責任を感じてくれたのか、

一年近く悩んだ結果、「兄貴の力になれるなら」と帰ってきてくれることになったのである。

そんな弟をひどい目に遭わせることなどできるはずがない。



そう考えて思いついたのが「もし万が一にも自分たちがどうにもならないほど揉めてしまった時には、

兄である自分が辞める」ということ。しかしそれだけでは自分の分が悪い(笑)。

そこで「自分が辞めるが、その時には目一杯の退職金をとって辞める」ということを付け加えた。

我ながらいいルールを考えたものだと思う。そうすれば「喧嘩別れはどっちも損」ということになる。



それがよかったのかどうか、なんとか今のところは仲良くやれている。

もちろん喧嘩がいっさい無いわけではない。「喧嘩」というか、「議論」であるから、あって当然だ。

それが一線を越えないのには、理由が四つある。一つは上に書いた「最初の約束」のおかげ。

二つ目には、年が十個も離れていること。たしかにこれだけ離れていると喧嘩になりにくいだろう。

三つ目には、やはり親父のおかげ。一度会社で二人が口論していた時、「ばかもん!」とえらい

剣幕で親父に怒られたことがある。「ありゃイカン。なにより社員が迷惑だ。」と反省している。

最後四つ目は、28年前に22歳の若さで亡くなった弟(次男)のおかげである。もし僕たち二人が

泥沼の関係にでもなろうものなら、彼がどれだけ悲しむだろうかと思うと、それだけはできない。

これは母に対しても同じである。



長くなってしまったが、結局兄弟経営でいちばん大事なことは、

「会社をどうしたいのか?」ということだと思う。



兄弟が一つの会社で、人間的にいがみ合って何のいいことがあるのか?

会社を潰したいのか?社員を、親を、お客様を困らせたいのか?誰もそんなことは望まない。

なのにやはり揉めてしまうのは、「会社をどうしたいのか?」という根っこを忘れてしまうからだろう。



お互いを認め合い、補い合い、社員のためにも、親やご先祖様のためにも、

兄弟が力を合わせてがんばる。

これこそが兄弟経営のいいところであり、これからもそのために仲良くやっていこうと思う。





5年前の東京での展示会場で  左から弟、母と私



(おまけ)



滋賀県には「メンターム」で有名な近江兄弟社という製薬会社があります。

ここも兄弟で始められたのかなと思い調べてみたら、ここの会社の場合は

「キリストのもと、人はみな兄弟である」というキリスト教の考えから名付けられた

そうです。でも込められた「思い」は同じですね。









└誠一郎のコラム