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Miyajima News

2019年12月14日

三十年の意味

【令和元年(2019年)12月のコラム(第228号)】 

 

1.三十年の意味

僕は本を読むのが好きなのですが、実は読むのがすごく遅いのです。
だから読んでいる途中でどこまで読んだか忘れてしまってやめてしまったということもしばしば(笑)
仕事柄、経営の参考になるような本はよく読むのですが、やっぱり胸にじーんとくるのは小説です。
先日もそんな作品に出会うことができました。宮本輝さんの「三十光年の星たち」という本です。

けっしてエリートとはいえず、むしろ挫折ばかりで親からも見放されていた青年が、京都で或る老人に出会う。
その老人は、その青年の中に「何か」を感じ取り、自分のあとをその青年に託そうとする。
そして様々な人と出会い、今まで経験したことのない日々が始まる・・・というような作品でしたが、この中で作者が言いたかった(であろう)ことは、こういうことだったように思う。

「人間、どんな道を歩むにせよ、その道ひとすじに必死に努力し、もがき苦しみ、師匠に叱られ続け、幾多の困難に出遭い、三十年たってやっと『芽』が出てくるのだ。
だからその人が本物になれるかどうかは、それまでの三十年に耐えられるかどうかにかかっているのだ。」

思い返せば私も平成元年にミヤジマに入社し、奇しくも今年でちょうど三十年たった時期でしたので、この小説に出会ったことに運命のようなものを感じました。
祖父が始めてくれた「鍛造」という仕事に就き、右も左もわからぬまま同業他社を見ては自社との差にショックを受け、設備投資をしては失敗し、社員のためと思ってしたことが逆に反感を買ってしまうなど、まさに失敗続きの三十年でした。
しかし宮本輝さんの小説に書かれてあることが真実だとすれば、今までの三十年は決して無駄ではなかったのかもしれない、と勇気づけられました。

「人生は一度限り」です。
今までの三十年間でやっと少し芽が出てきたのかどうかは自分にはわかりませんが、今まで学んで来たことや出会いを生かし、少しでも世の中のお役に立てるよう、これからも努力していきたいと思います。

では皆さま、よい年末をお過ごしください。

 

 
去る11月22日、弊社が所属させていただいている近畿鍛工品事業協同組合の
設立70周年記念式典を開催することができました。三十年前にある社長さんから教わった
「同業者を大切に」という言葉の意味が、やっと少しわかってきたような気がします。

└誠一郎のコラム