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Miyajima News
2017年9月10日
まんまん
【H29年(2017年)9月のコラム(第201号)】
台北の故宮博物院前のバスターミナルにて
1.まんまん
3年ぶりに台湾に行ってきました。
現地の企業を訪問する目的で、2泊3日のとんぼ返りでしたが、
帰る日の飛行機が夕方の便だったので、以前から一度ゆっくり見たいと思っていた
「故宮博物院」にぶらっと一人で行ってみました。
故宮博物院は台北の中心部から北北東へ少し離れたところにあります。
地図を片手に地下鉄とバスを乗り継ぎ、ホテルから小一時間で着きました。
故宮博物院といえば、なんといってもコレ!
翡翠(ひすい)で作られた白菜の彫刻品です。
本体の大きさは手のひらにのる程度の小さなものですが、
その瑞々しさと精緻な技に、思わず引き込まれます。
殆どの展示品がフラッシュなしであれば撮影OKなので、
みなさんスマホや本格的なカメラを構えて真剣に撮っておられました。
「おっと、あんまりゆっくり見てたら飛行機に間に合わんようになるがな!」と思い、
帰りは荷物を預けてあるホテルまでタクシーで帰ることにしました。
以下、タクシーの運転手さんとの会話・・・。
(台湾語は殆どわかりませんが、ほんの少しだけ中国語がしゃべれるので)
「にいちゃん、日本人かい?」
「はい、そうです。おとついこちらに来て、今から日本に帰るんです。」
「昼メシは食べたのかい?」
「いえ、まだなので、ホテルの近くで食べようと思ってます。」
「あんたのホテルの近くに美味いメシ屋があるんだが、連れて行ってあげようか?」
(変なとこに連れて行かれたらヤバイかな?と思いつつも、
どう見ても悪いオッちゃんではなさそうだと思い)
「じゃあ、お願いします。」
ということで走ること約10分・・・「え?ここ?」という感じの、
ごく普通の食堂の前でタクシーは停まった。
「オッちゃんもご飯まだやろ?よかったら一緒に食べようか?」
「いや、俺は仕事あるからいいよ。」
「でも注文のしかたがわからないから、一緒に来てよ。」
「ほなしゃーないな。一緒に行こか!」
ということで、ついさっき会ったばかりのオッちゃんと二人で昼飯を食べることになった。
目の前に並んだおかずから、よさそうなのを注文してくれているオッちゃん
二人でこれで千円弱。オッちゃんと同じ皿のおかずを箸で突つきながら、
「台湾は何回目や?」、「子どもはいるのか?」みたいな会話を楽しみました。
食事の最中、オッちゃんがどんぶりを手に持ってガッガッと美味そうに
食べるのを見て、自分も同じようにせなあかんかなと思ってそうしたら、
オッちゃんがニッコリ笑ってこう言った。
「まんまん・・・・まんまん」
「まんまん」とは、緩慢の「慢」という字を使って「慢慢」と書くのですが、
その字のとおり、「急がんと、ゆっくりしいや」という意味です。
「オッちゃんが豪快に食べるから自分もそうしたんやがなー!」とは思ったが、
ここで反論しても意味がないと悟り、僕もニッコリ笑って
「明白了(ミンバイラ:わかったよ)、我吃慢慢(ウォーツーマンマン:ゆっくり食べるよ)」と
言ったら、オッちゃんも実に嬉しそうな顔をして笑った。飯粒を飛ばしながら・・・。
帰りの飛行機の中、「また一つ、旅の思い出ができたなあ」と感慨に耽りながら
オッちゃんとの会話を思い出す。
「まんまん・・・あせらず、ゆっくりかー。いい言葉やなあ。大事なことやなあ・・・」と。
オッちゃんと再び会うことは、まずないだろう。
でも、もしまた台北で時間ができることがあれば、その時は再び故宮博物院に足を運び、
のんびりとタクシー待ちをしてみようかなと思う。
桃園市にある天文大同特殊鋼さんにて
ここに私の金属材料の師匠が駐在されています
台北から車で北東へ約1時間の所にある「金鍛」の皆さん
素晴らしい鍛造会社です