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Miyajima News
2009年10月23日
評価の『積み重ね』
【H21年10月のコラム(第98号)】
1.評価の『積み重ね』
ひょんなことから、地元多賀町出身の画家かつ陶芸家の方(Oさん)と
知り合うご縁をいただいた。
美術品の評価は素人の私にはまったくわからないところだが、「現代美術年鑑」
なるものでその方の評価を見てみると、
油絵の場合は1号あたり70万円、陶芸の場合は幅21cm高さ21cmの大きさの
壺の焼き物で250万円という、びっくりするような高い評価で、
これまたすごい人が地元出身でおられるものだなあと驚いた。
その方が9月のシルバーウィークに窯焼きをするので、もしよかったら
来ませんかとお電話をいただき、好奇心旺盛な私は喜んでお伺いすることにした。
行ってみて驚いた。
窯焼きといっても風呂の釜焚き程度かな・・・と思い、酒でもやりながら本でも
読みながらのんびり薪をくべてやればいいのかなと思っていたのだが、
なんのことはない、火をつけてから目標の1230℃まで、48時間もかけて
1時間刻みに所定の温度カーブに沿って上げていかねばならない。
(ここがノウハウらしい)
昇温が速すぎても遅すぎてもダメ。
肝心の焼き物が割れてしまったり、綺麗に焼けなかったりするとのことである。
だから窯に放り込んでいく薪の量を、温度計とにらめっこをしながら
よく考えないといけない。とても本を読んでいる暇などない。
やっと目標の1230℃に達したら、そこから更に48時間、その温度で焼き続ける
のである。昇温と保持と合わせて約100時間。その間にもし居眠りしてしまったら
あっという間に温度が下がっていくので気を抜く暇もない。
実に大変な作業なのである。
だからOさんは現在大阪にお住まいだが、窯は親元の滋賀に持ち、窯焼きの時は
親兄弟親戚のみなさんを総動員して交代制で焼かれるのだ。
不肖私もその100時間の内のほんの数時間をお手伝いさせていただいたのだが、
その間にOさんといろいろなお話をさせていただき、とても楽しい時間が過ごせた。
Oさん曰く、芸術の世界で生きていこうとすれば、自分でどんなによいと思う
作品をつくったとしても自己満足に終わってしまってはだめだ。だからせっせと
展示会に出品して賞をとるなど、コツコツとそれなりに周りの評価を得ることを
積み重ねていかねばならない。それは学問の世界でいうと、東大に入る
力のない人間が、「東大なんてダメだ」と批判しても誰も耳を貸してくれない
のと同じことだ・・・と。
この話を聞いて、芸術の世界も厳しいなあと思うと同時に、
会社経営もまったく同じだと感じた。
どんなに素晴らしい経営理念を唱え、どんなに一生懸命仕事に取り組んで
いたとしても、結果としてちゃんと利益を出し、払うべき税金を払い、社員の生活を
よくしていくことができなければ会社を経営している意味がない。
平成5年以来16年間、山谷あれどもなんとか堅実に黒字経営を続けてこれた。
しかし今年ばかりはなんともならない。惨憺たる数字である。情けないことだ。
かといって、逆転満塁ホームランなどといったウルトラCを狙ってもしかたない。
これからもQ・C・Dの維持向上に努め、お客様からいただく評価をコツコツと
積み重ねていかねばとあらためて思った。
【うれしかったこと】
ほんの数時間しかお手伝いしていないのに、「よかったらこれ持って帰り」と
お茶碗をくださいました。小ぶりですがなんともいえず柔らかい手触りの茶碗です。
冒頭の「評価基準」からすると軽くウン十万円はするのかな??と思いつつも
「ぜひ使ってくださいよ」というお言葉を守って毎日おいしくご飯を戴いております。
ありがとうございました。
空気最高の森の中にあるOさんの窯
(滋賀県内に2ヶ所お持ちです)