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Miyajima News

2009年9月14日

知的バックグラウンド

【H21年9月のコラム(その2)(第97号)】









1.知的バックグラウンド



 PHPの10月号を読んでいたら、巻頭エッセイの「生きる」という連載に、

高岡俊英さんという、43歳の男性の文章が載っていた。

そこには、その方が浪人時代に通っていた予備校の、ある女性講師の言葉が

思い出として語られていた。



 一年間の勉強を終え、いよいよ受験を控えた最後の授業の時、その先生は

こう言われたそうである。

「今日が最後の授業です。予備校講師の私がこんなことを言うのもなんですが、

志望校に受かろうが受かるまいが、実は大したことではないのです。

私が皆さんに願うことはただ一つ、インテリであってほしい、知的な人間で

あってほしいということです。そのためには、一生本を読むことを忘れないこと。

どんな本でもいい。いつも一冊の本を身につけているという感触を

なくさないでください.。」



 僕はこういうことを言う先生、本当に素敵だと思う。



 この話を読んで、ほぼ同じようなことを聞いたことを思い出した。

私の高校は彦根東高校といって、国宝彦根城のお濠の中という最高の環境にある

高校で、江戸時代の井伊家彦根藩の藩校「稽古館」が発祥だそうである。

そういう校風のせいか、なにやらやたらと癖のある先生が多かったように思う。

その一人に政治経済担任の藤野という先生がいて、その先生が何かの時にぽろっと

言われた言葉を、僕はなぜか今でも鮮明に覚えている。



藤野先生は「成績がよければいい大学にいける。その後いい会社にも入れる。

しかし本当に大事なのは、受験のための学力ではなく、“知的バックグラウンド”

です。たとえば歴史なら、なになにが西暦何年に起こったとか、そういう知識だけでは

なく、それがどういう背景、経緯で、しかも国際的にどういう状況の中で起こったか、

そういうことが大事なのです」と言われたのである。



「知的バックグラウンド」



それ以来、なぜかその言葉は僕の頭の中にいつもあり、浅はかな知識でなんとか

日々をやり過ごしている自分を戒めてくれている。





└誠一郎のコラム