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Miyajima News

2009年1月31日

ぶれない

【H21年1月のコラム(第88号)】







昨年末に、二人の芸術家の本を読んだ。



一人は日本画家の平山郁夫さん、もう一人は「芸術は爆発だ!」の

言葉があまりにも有名な岡本太郎さんである。

お二人の分野・タイプはまったく違い、書いていることも書き方も

全然ちがうのに、妙に共通点もあったりしてとてもおもしろかった。



新年を迎え、あまりの大変さの中でもがく内にあっという間に1月も

終わろうとしているが、この二人の本を1月と2月で紹介します。



人生では、人との出会いがとても大事だと思うが、本との出会いは

同じくらい重要だと思う。

散歩の途中にふと本屋に立ち寄り、平山郁夫さんの本を見つけた。

「ぶれない」という本の題名と、表紙のなんとも言えない絵が妙に心に残った。



それから間もなく、たまたま滋賀にある佐川美術館に行くことになった。

開館10周年記念で「平山郁夫特別展」をやっていた。



  



玄奘三蔵、いわゆる西遊記の三蔵法師が、お釈迦様の仏教の経典を求めて

中国から遠くインドまで、十七年に亘る命懸けの旅をした風景を、平山郁夫さんは

生涯のテーマとして描かれていた。

素晴らしい絵ばかりだった。



  



帰ってきて、すぐに本屋に足を運び、「気になっていた」この本を買ったのは

いうまでもない。







それにしても

「天山南路(夜)」という作品の白い衣をまとった男は何者なのか?

気になって仕方がないが、人間の心の奥底に住む魂の姿ではないか?

と思ったりもする。



平山郁夫著「ぶれない」より抜粋



(1)まず「オーソドックス」を自分のものに



教養が何より大事だということを、私は大伯父から教わりました。

私の大伯父は清水南山といって、東京美術学校(今の東京芸大)の

先生をしていた、当時、美術工芸の第一人者とも言われた人です。

(略)美術学校に合格し、私がいよいよ広島から東京へ出発しようという時、

大伯父が「郁夫よ、これだけは忘れるな」と話してくださった三つの心構えが

あります。

そのうちの一つが「古典を学べ」ということでした。

(略)

「古典の勉強と同時に、自然をよく見ることも大切だ。写生をどんどんして

自然から学びなさい」とも加えました。

(略)自分という作品を一過性のもので終わらせるのではなく、時代を超えて

人々に愛されるためには、やはりその人生観が新旧をも超えた

オーソドックスなものでなければなりません。

古典というものは、そういう普遍性を持ったものなのです。





(2)つべこべ言わずに一度「終点」まで行ってみる



目標に向かって取り組んでいるとき、「どうやっていいのかわからない」

というときが必ずある。私もそうでした。

(略)こういうときには、つべこべ言わずに、あれこれ考えずに、

とにかく最初に計画した最終地点、つまり目的地まで行ってみることが

大切です。(略)けれども、いつもゴールまで行ってみることもせずに

途中で方針を変えてばかりいると、それが習い性となり、一度も完走した

という充足感を味わうことができません。

(略)趣味でやるのなら別ですが、プロとして仕事としてやっていこうと

思うのなら、ある時期は死ぬ思いでやらなければ大成しない。

(略)こうして、何千枚、いや一万枚以上も描いたと思います。

この基礎があってこそ、今の自分がある。





(3)自分の弱い部分は「徐々に」ではなく、「一気に」直す



1986年2月24日。55歳のこのとき以来、一滴も酒を口にして

いません。酒を断ってからは、それまでよりも多くの作品を残すことが

できるようになりました。

「これが自分の弱いところだ」と気がついたら、気がついた時点で

やめるか、あるいは修正すべきです。

私の場合は「酒」でした。(略)弱点は必ずどこかで自分の足を

引っ張るものなのです。



(4)おわりに(自分を粗末にするな)



迷いなく「これを一生狙っていく」というターゲットを定め、

それに向かって自分のすべてのエネルギーを一点集中させる。

それによって「ぶれない」ものができ上がっていく。(略)

その目標が、「人間として何かの役に立ちたい」というものならば、

どんなに時代や環境が変わっても揺るがない一番強いものになるでしょう。






平山郁夫さんは「真摯」という言葉がぴったりの方だと感じましたが、

そんな方でも自分の弱点を「酒」だと認め、それを断たれたという点、

あいだみつをさんの言葉ではないですが「その時どう動く」・・・ということも

考えねばならない年齢になってきたかなあと思います。





私個人の今年の年賀状の題に使わせていただきました。





恒例、全員集合の年賀状です。

本年もよろしくお願いいたします。


└誠一郎のコラム